北村正裕BLOG

【北村正裕のナンセンスダイアリー】童話作家&シンガーソングライター、北村正裕のブログです。 執筆情報用ホームページ(童話作家・北村正裕のナンセンスの部屋) http://masahirokitamura.my.coocan.jp/ と、音楽情報用HP(北村正裕アート空間) http://masahirokitamura.art.coocan.jp/ もよろしく。 X(旧ツイッター)アカウントは「@masahirokitamra」です。

2019年09月

バレエアムライン、原典版要素をいれたシュレップァー版「白鳥の湖」

9月20日、オーチャードホールで、バレエ・アム・ライン、シュレップァー版「白鳥の湖」日本公演初日を見てきました。観劇。音楽構成については、すでに、9月20日に速報ツイート
https://twitter.com/masahirokitamra/status/1175051536822493184
に書きましたが、原総譜の4番は第1ヴァリアシオンのみ演奏し他の5曲は全て削除。5番は4曲中前半2曲を削除して後半2曲のみ演奏。6番削除。20~23番の4曲すべて削除。25番削除。原総譜付録のルスカヤを19番の直後に挿入。というわけで、かなりの削除がありましたが、編曲はなかったと思います。
詳細については、後日、ホームページのバレエコーナーの観劇レポートのページ
http://masahirokitamura.my.coocan.jp/swanlake-rhein19.htm
に書く予定ですが、ここでは、公演当日の音楽構成速報のツイートに続き、速報第2弾として、音楽と演出について、気づいたことを少し書いておきます。
まず、音楽についてですが、すでに、どの曲が削除されたかについては、速報ツイートに書いた通りですが、削除は多いものの、編曲はされておらず、例えば、原総譜の13番の5曲目や17番等も、原総譜の通りに演奏されていて、これは、多くのクラシックバレエのバレエ団が、1895年のプティパ・イワノフ版上演のさいにリッカルド・ドリゴによって編曲されたバージョンを使用していることを考えると、ひとつの特徴だと言えると思います。通常、削除されることのない20~23番の民族舞踊4曲(ハンガリー、スペイン、イタリア、ポーランド)をすべて削除していながら、プティパ・イワノフ版で削除されていた19番の7曲は削除せずに、すべて演奏するなど、今日の多くのバレエ団の上演の基礎となっているプティパ・イワノフ版で削除されたり、改変されていた音楽を優先的に演奏するという意図を感じました。
公演会場で1部2,000円で販売されていた公演プログラムに載っているシュレップァーのインタビューには、
「私たちが《白鳥の湖》だと思っているものを一切合切、原理的に破壊してしまうようなことはせずにチャイコフスキーのオリジナルスコアとそれに付随するリブレットに基づいて、このメルヘンを私なりの視点から語り直したい」
と、書かれていますが、ドリゴ版ではなく、チャイコフスキーのオリジナルスコアを基に演奏するという姿勢は、それなりに理解できます。これだけ多くの曲が削除されているとなると、とてもチャイコフスキーによる原典版音楽の舞台化などとは言えないと思いますが、それを尊重しようという姿勢があることはたしかなようです。公演プログラムの「主催者一同」の「ご挨拶」のところには、「原典版の音楽と初演台本を採用」と書かれていますが、実際に舞台も見てみると、上記の通り、「原典版の音楽を採用」と言っても、全曲、削除なしに演奏するというわけではありませんでした。
次に、「原典版を採用」という点についてですが、これについても、気づいたことを記しておきます。
1985年のプティパ・イワノフ版台本(改訂台本は、作曲者の弟のモデスト・チャイコフスキー)と、チャイコフスキーが作曲するさいに使用した原台本(初演が1877年なので1877年版と呼ばれることもあります)との大きな違いは、プティパ・イワノフ版ではオデットがもともと人間の王女であり、悪魔ロットバルトの呪いで昼間は白鳥の姿でいなくてはならないという設定になっているのに対して、原台本(台本=ベギチェフ、ゲリツェル)では、オデットは妖精の娘であり、昼間の白鳥の姿は、魔女(原台本では魔女がオデット命を狙っていることになっています)の呪いによるものではなく、湖で遊ぶための妖精の力による姿です。ですから、原台本の物語では、白鳥の姿自体は、オデットたちにとって、何ら悲劇的なものではないはずなのです。しかし、今回の演出は、「原台本を採用」としながら、白鳥が登場する第2幕は、冒頭から、非常に暗い雰囲気で、本当に原台本の物語が反映されているのか、疑わしいと感じました。また、原台本では、オデットの結婚まで、オデットを護るものとして、オデットの王冠が重要なアイテムなのですが、今回の演出では、王冠は登場さえしませんでした。
一方で、原台本では、オデットを憎む魔女の正体はオデットの継母であり、ロットバルトとは別人物であり、継母に対して、オデットを守ろうとするオデットの祖父の涙で湖が出来たということになっていますが(プティパ・イワノフ版では、湖を作ったのはオデットの母の涙)、今回の演出では、原台本の邦訳を読む限り、舞台に登場することは想定されていなかったと思われるオデットの祖父が、舞台に登場します。そして、この演出を、原台本を生かす演出だと考えているようなのですが、そもそも、魔女の正体がオデットの継母であるという設定は、原台本の中の重要な要素なのかどうか、僕には、疑問に思えます。むしろ、この設定は、まるで、グリム童話決定版(第7版)の中の「白雪姫」などから借りてきたように思えて、「白鳥の湖」原台本の弱点なのではないかと思うので、オデットの継母と祖父が対峙するという構図の舞台を見て、特に素晴らしいとは思えませんでした。
ラストは、死んでしまったオデットを抱えた王子が、舞台右奥に消えて去って行き、舞台中央奥では、左側の魔女が倒れて消え、右側の祖父が立ちつくす中、白鳥たちが舞台上に姿を現すというものでした。
ここで、ひとつ注意しておかなければなららいのは、白鳥の姿をどう表現するかということです。
原台本でも、1895年版でも、白鳥の姿は、模型を使って表現し、ダンサーが演じるのは、あくまでも、夜の人間の姿になった娘たちだけだろうと思うのですが、今回の演出では、白鳥の姿の娘たちも、ダンサーが演じています。第2幕序盤の登場時の衣装の腰のまわりに着脱可能な羽毛を現すような飾りがつけられていて、この飾りの着脱によって、白鳥の姿と人間の姿を演じ分けていました。ですから、ラストシーンでは、この飾りをつけたダンサーたちが、舞台を走りまわって去って行くという演出で、白鳥の出現が表現できるわけです。ベルウィンミルズ版原総譜のラストシーンのところには、ロシア語とフランス語で「湖面に白鳥たちが出現」と書かれていますが、このスコアのト書きを、今回の演出は、チャイコフスキーの想定とは違う形であるとはいえ、きちんと、それに従ったことになると思うので、そのことは、評価したいと思います。ただし、原台本にある湖の氾濫などの具象的な表現などは一切なし。視覚的には、かなり抽象化されたモダンバレエのスタイルでした。
原総譜付録の曲のうち、ルスカヤ(ロシアの踊り)は、19番の直後に挿入され、ここで、王子とオディールが踊るのですが、このとき、舞台奥、やや右寄りの位置に、3人の白鳥の娘が現れ、このとき、王子は、この白鳥たちのほうに視線を向けることはありませんが、頭をおさえて悩む様子を見せます。これは、王子が、オディールと結婚してもよいのか、湖で出会ったオデットと同一人物なのか、などと迷う気持ちを表現しているようでした。プログラムを見ると、ここで登場する3人の役名は「ジークフリートの記憶」となっており、キャストは、第2幕の「白鳥の女性たち」16人のうちの3人です。「ジークフリートの記憶」という役名、魅力的な感じがします。

今回のシュレップァー版とは別に、1877年版の研究や、その復元を目指す動きも、ロシアなどでは、たぶん、行われているのだろうと思います。
例えば、「la dolce vita」というブログの15年10月17日の記事「『白鳥の湖』初演についての発見続き」という記事
http://dorianjesus.cocolog-nifty.com/pyon/2015/10/post-4c50.html
などに、資料発見の情報が載っています。検索すると、グラスノヤルスクでのボブロフ版など、初演当時のレイジンゲル((ライジンガー)振付による舞台の復元を目指そうという動きもあるらしいです。こうした動きについても、今後、新しい情報が出てくるかもしれません。

【追記】
シュレップァー版「白鳥の湖」については、後日、、ホームページのバレエコーナーの観劇レポートのページ
http://masahirokitamura.my.coocan.jp/swanlake-rhein19.htm
に、もう少し、詳しく書く予定です。

〔ホームページの中の「白鳥の湖」の基礎知識のページ〕
http://masahirokitamura.my.coocan.jp/swanlake-g.htm

〔ホームページ紹介サイト〕
https://masahirokitamura33.wixsite.com/masahirokitamura

P_20190920_175224
2019年9月20日、オーチャードホール

20190921SS00001

2019年9月20日、シュレップァー版「白鳥の湖」音楽構成速報ツイートの画面

【19. 9.28追記】
9/27に、宣伝パンフの疑問点についてツイートしました。
https://twitter.com/masahirokitamra/status/1177436355485261824
情報、ご意見等いただければありがたいです。
そして、9/28、ホームページに、20日の公演について、21日のブログ記事での速報より少し詳しい観劇レポート
http://masahirokitamura.my.coocan.jp/swanlake-rhein19.htm
を掲載しました。
(19. 9.28追記)

駿台予備学校でのAI学習教材atama+導入情報等

9月3日の朝日新聞夕刊の1面トップに、塾向けのタブレット用学習アプリ、atama+(アタマプラス)の採用が広がっているという記事が出ていましたが、翌4日のcnet japanにも、
「AI
学習教材『atama+』、2020年から全国の駿台予備校に導入へ」
という記事
https://japan.cnet.com/article/35141975/
が出ました(駿台予備学校がニュース記事の中で「駿台予備校」と呼ばれるのはしばしばです)。
自分が数学講師の仕事をしている予備校も含めて、塾・予備校の教室の景色は、これから大きくから変わるのかもしれません。
駿台予備学校を経営する学校法人駿河台学園とアタマプラスを開発したatama plusの9月4日のプレスリリースが、PR TIMESのページ
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000011.000042400.html
に出ています。

これとは別に、個人向けのスマホ用学習アプリの利用が広がっているという記事が、5月22日の朝日新聞に掲載されていましたが、僕がボランティアとして参加している無料学習支援会に来ている子の中には、その記事でも紹介されていた学習アプリ、スタディサプリに、学校全体で加入しているという子がいて、そのアプリでの勉強が宿題として出されるのだそうです。それで、そのアプリの問題について教えて欲しいと頼まれたことがあり、そのとき、初めて、学習アプリの画面を見ました。

9月3日の朝日新聞夕刊記事には、塾向けAIアプリの開発の背景のひとつとして、「かつては集団の授業が多かった学習塾は近年、個別指導が主流になってきている」ということも書かれています。

これに関する新聞記事としては、7月の駿台(駿河台学園)と個別指導塾「TOMAS」(リソー)の提携のニュース記事の例があります。
例えば、「予備校、集団から個別へ 駿台がリソーに出資」という見出しの日経新聞の記事
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO47016650V00C19A7XQH000/
があります。
この日経記事では、
「人気講師を集め、競争意識を高める集団授業を強みとしていた大手予備校は、少子化を背景に苦戦を強いられている」
と書かれていますが、過剰に「競争意識を高める」ような「受験産業的」授業のあり方が、塾や予備校で見直される契機になるなら、個別指導化にも良い面はあるかもしれませんね。ただ、ひところ問題となった「ブラックバイト」の問題、つまり、講師の待遇の悪化による教育環境の悪化が起こらないかどうかには注意が必要でしょうし、授業料の高騰を招かないかという問題もあるでしょう。学習アプリの導入拡大の背景には、そうしたコスト面の問題もあるのかもしれないと思えます。

学校でも塾でも、子ども達の勉強の仕方が変わっていくでしょうし、教師の役割も同様だと思うので、教育環境の変化をよく見て、新たな問題点への対応を考えていくことが、教師や教育関係者にとって重要になるだろうと思います。

自分の場合は、今年も、予備校の数学講師の仕事を続ける一方、豊島区での学習支援ボランティアとしての活動もやっていて、先日、8月25日には、地域の子どもたちを引率して、埼玉県、飯能河原でのバーベキュー大会に行ってきました。学習支援会では、経営や企業の論理に縛られることなく、全員がボランティアというスタッフ仲間とともに、子どもたちとの触れあいを通じて、勉強させていただくとともに、バーベキューなどのイベントで楽しませてもらっています。

〔ホームページ内の教育・学習支援関連情報リンクのページ〕
http://masahirokitamura.my.coocan.jp/edu-l.htm

〔ホームページ紹介サイト〕
https://masahirokitamura33.wixsite.com/masahirokitamura

〔YouTube北村正裕教育チャンネル(Masahiro Kitamura)〕
https://www.youtube.com/channel/UCqxFebRfIZMXCZ3FcqPY3ag


hanno-190825pbyono
2019年8月25日、埼玉県、飯能河原、学習支援会「クローバー」のイベント、バーベキュー大会

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