西本晃二氏の著書「落語『死神』の世界」(青蛙房発行、2002年11月、本体価格3200円)については、すでに、HPの中のプロムナードのコーナー
http://homepage3.nifty.com/masahirokitamura/promenade.htm
の「グリム童話と落語『死神』」のページでも紹介しましたが、この本、発行日こそ、僕の論文「死神のメルヘン」(「駿台フォーラム第18号」、2000年8月)より、かなり後ですが、そこに収録された研究内容の大部分は、僕の論文より、ずっと前からなされていたもののようであり、部分的に僕の論文の引用はあるものの、僕の論文の論旨をふまえたものにはなっていません。僕の主張は、落語「死神」のルーツは、あくまで、グリム童話であって、オペラ「クリスピーノ」は、全く関係ないというもので、そう考える根拠、というより、「クリスピーノ」ルーツ説の根拠とされていたものをひとつひとつ否定してきたのですが、それに対する反論は、一切、ないようです。たとえば、洋行経験のある福地桜痴が円朝のブレーンであり、福地桜痴が洋行の際に、オペラ「クリスピーノ」を見たのではないかという仮説に対しては、それ自体は、僕としては、特に、否定もしていませんが、それより、福地桜痴が、グリム(兄)と面会していた可能性が、日独双方の記録から、考えられるということも、上記論文に書きましたが、そう考えれば、福地桜痴の関与の可能性は、「クリスピーノ」ルーツ説より、グリムルーツ説に有利なものになります。
もともと、イタリア文学の研究家だった西本氏が、落語「死神」の研究を始められたのは、この落語が、イタリアのオペラ「クリスピーノ」から作られたと言われていて、そのオペラについての質問を受けたのがきっかけだったそうですが、僕の現在の考えでは、その前提、すなわち、「クリスピーノ」ルーツ説は、全くの間違いだったと思います。そして、何故、その間違った説が広まってしまったかということも、論文で述べました。しかし、だからといって、西本氏の研究が無意味なものということにはなりません。間違った説を前提にしていても、西本氏が調べた内容は、それなりに興味深い内容で、実は、僕は、未だに拾い読み程度にしか読んでいないのですが、西本氏の長年にわたる研究の成果が披露されていて、関連方面の研究にとっても貴重な資料になるのではないかと思います。
興味を持たれた方には、僕の論文と読み比べていただければさいわいです。僕の論文の掲載誌「駿台フォーラム第18号」の入手方法については、HPにも掲載しましたし、駿台教育研究所にお問い合わせいただければよいと思いますが、多分、国会図書館でも閲覧できると思います。
駿台教育研究所のHPは、 http://www.sundai.ac.jp/kyouken/ です。

なお、音楽工房「blooming sound jp」のブログの
http://bloomingsound.air-nifty.com/blog/2004/09/post_2.html
の記事に、西本氏の上記著書の話題が載っています。