バレエ「白鳥の湖」を初めて見るという場合に、どのバレエ団の舞台が良いでしょうか?という質問を、最近、直接受けたり、ネット上の掲示板で見かけたりすることがありますが、東京近辺の方になら、まずは、牧阿佐美バレエ団のウェストモーランド版がお薦めです。このヴァージョンは、英国ロイヤルバレエに伝わる伝統的な舞台を土台にしていて、ストーリー、パントマイムとも、基本的には、1895年のプティパ・イワノフ版(事実上の原典版)に忠実であり、「白鳥の湖」の基本を味わうことができます。音楽は、1895年版と、完全に同じではありませんが、そもそも、1895年版が、チャイコフスキーの原曲通りではなく、「白鳥の湖」以外の曲が挿入されていたりしていたのに対して、牧阿佐美バレエ団のウェストモーランド版は、そうした曲を排除して、むしろ、原曲に近づけています。
一方、海外のバレエ団で、しばしば日本公演を行っているバレエ団の中では、ムソルグスキー記念サンクトペテルブルク国立バレエ団(レニングラード国立バレエ団)のボヤルチコフ版が、1895年版に近い舞台を見せてくれます。このボヤルチコフ版は、ストーリー、音楽ともに、ほとんど、1895年版そのものであり、一見の価値があります。ただ、残念なのは、他の、多くのロシアのバレエ団同様、第2幕で、オデットが、自分の身の上を語るパントマイムが削除されていることです。それに対して、英国ロイヤルバレエのダウエル版は、ロシアで途絶えながら、英国で引き継がれたマイムをしっかり見せてくれて、これまでに僕が見た舞台の中で、おそらく、もっとも1895年版に近いものだと思います。ダウエル版の「白鳥」の日本公演は、99年に行われましたが、貴重な体験でした。
今年、これから東京で予定されている公演では、Kバレエカンパニーの熊川哲也版もお薦め公演のひとつです。これは、基本的には、プティパ・イワノフ原典版に近く、さらに、冒頭にブルメイステル版に近いプロローグを加えたり、ラストは、船で昇天していくシーンと言うより、天国そのもののシーンのようになっていたりという改訂がされています。
ロシアでは、ソ連時代に、本来、悲劇であったはずの「白鳥の湖」が、いわゆるハッピーエンドに変えられてしまったようで、今でも、そのソ連版の伝統を引き継いでいる舞台が多いようで、僕には、味気ないものに思えます。日本のバレエ団でも、そうしたソ連版を引き継いでいるものが多く、僕には、残念なことだと思えます。

「白鳥の湖」については、HPの中のバレエ・オペラのコーナー「白鳥の湖への旅」
http://homepage3.nifty.com/masahirokitamura/swanlake.htm
に、上記ダウエル版の観劇レポートなど、関連記事を掲載しています。また、同じく、HPの「著書紹介」のページには、著書「オデット姫とジークフリート王子のほんとうの物語」の紹介記事もあります。

なお、QOOさんのブログの
http://dancinqoo.jugem.jp/?eid=30
の記事に、2005年1月8日の「牧阿佐美バレエ団」の公演のレポートが載っています。