僕は、童話の創作活動をしている関係で、挿絵というものには、当然、関心はありますが、絵本についての知識はほとんど持っていないのが現状です。しかし、架空社から1991年に出た『やまのかいしゃ』という絵本(スズキコージ=作、片山健=絵)の存在を昨年になって知り、そのユニークさに感銘を受けました。そして、このようなナンセンス絵本を出している出版社の存在そのものにも感銘を受けました。
http://blog.drecom.jp/masahirokitamura/archive/13に書いた、先日の架空社の社長さんとの絵本の出版を視野に入れた話し合いの機会も、このことが、ひとつのきっかけでした。

さて、その『やまのかいしゃ』の物語ですが、
いかにも落ちこぼれ社員風といった感じのほげたさんが、ある日、出勤のために電車に乗ると、なぜか、電車は、会社とは反対の山の方へ向かっていきます。おまけに、かばんとめがねも忘れてきたことに気づきます。終点の山奥の駅で降りたほげたさんは、「きょうは、やまのかいしゃへいこう」と勝手に決めて、山道を登って行き、途中で、ほいさくんとも合流して、ふたりで、山の頂上にたどり着きます。そこが「やまのかいしゃ」だと決めたふたりは、「むせんでんわ」で、「まちのかいしゃ」に電話までかけ、まちの社員たちも、一度は、「やまのかいしゃ」へやってきますが、やがて、ふたりを残してまちに帰っていきます。そして、「いまでも、ほげたさんと、ほいさくんは、やまのちょうじょうで、げんきにやっています」と結ばれます。
ラストのページの絵は、星空を背景にした、山の上のふたりのシルエットですが、こうなると、単に、会社をクビになったというより、天国行きという雰囲気さえ感じられます。そういえば、白い衣装の社長さんは、なにやら、神様風です。そして、"天国"から見れば、「まちのかいしゃ」のあくせくとした営みのなんとむなしいことか!もしかして、そんな世界が普通に見えてしまうめがねを忘れたことで、ほげたさんには、やっと、本当の自分の生活が見えたのかもしれませんね。あるいは、神様風の社長さんに連れられてまちに戻って行った社員たちの方が天国行きなのでしょうか?
車窓から見える、遠ざかる町の風景も、よく見ると、ビルの上に、大きなさるのような怪獣(?)がしがみついていたりして、異様です。電車のつり広告には、「ススキーノ・コジ氏の大予言」と書かれたものもあるといった、お遊びもあります。
この絵本は、1991年に出たものですが、文章の初出は、"母の友"(福音館書店)1986年9月号とのことなので、「むせんんでんわ」なんて、斬新ですね。余談ですが、その「ダイヤルをまわす」という表現とのギャップも、今読むと時代を感じます。ところが、絵の方は、どう見てもプッシュ式です。
とにかく、インパクトのある絵本です。

なお、最近のブログ記事のうち、『やまのかいしゃ』に関する記述があるものには、
banbiblogさんの「バンビの独り言」というブログの
http://blog.goo.ne.jp/banbiblog/e/26618fe9f2ef7ab170c7eca1e336c55a

だまさんの「シネマトカピクニック」というブログの
http://picnicine.no-blog.jp/tips/2005/07/post_ef21.html
があります。