9月3日にNHK総合テレビで放送されたドラマ『戦艦武蔵』に、絵本『はなのすきなうし』(マンロー・リーフ作)が登場してびっくり!
「NHKスペシャル」のひとつとしての放送でしたが、先に、BSプレミアムで放送されたものを再編集したもののようです。
この絵本『はなのすきなうし』、こどものころ、今は亡き母が買ってくれた絵本のひとつで、僕よりも母が気に入っていた本なのです。あるとき、他の本をどこかに寄贈したときにも、この本だけは、母の独断で残していたくらいです。
ドラマ『戦艦武蔵』の中では、戦死直前の兵士が、この絵本の原書"The Story of Ferdinand"について語り、闘牛を目指す牛たちに対する「しかし、フェルジナンドは違った(But not Ferdinand)」が繰り返し語られていました。
少し前、このブログの7月の記事
http://masahirokitamura.dreamlog.jp/archives/52398364.html
で紹介したように、今年の7月に、エッセイ『歌う童話作家のC型肝炎闘病二十年』
https://www.amazon.co.jp/ebook/dp/B01IJTYWYI/
をKindle版で電子出版し、その中で、C型肝炎で亡くなった母に関連して、母から聞いた山の手空襲の体験談を書いたばかりだったこともあり、この絵本への母の思いが、もしかしたら、母の戦争体験と関係があるのではないかと、はじめて感じました。もちろん、この本は、いわゆる反戦文学というものとは違うように思います。むしろ、マイペースへの愛を感じさせるものですが、平和への希求の心も、その延長上にあるように感じました。
実は、僕が、こどものころに母が買ってくれた絵本の中で、僕の一番のお気に入りは、『はなのすきなうし』ではなく、『こねこのぴっち』(ハンス・フィッシャー作)でした。この『こねこのぴっち』も、他のこねこたちと一緒に元気に遊べないちょっと内気なこねのが主人公という点で、少し、『はなのすきなうし』と似ているかもしれません。しかし、ぴっちが風邪をひいて寝込んでしまったときに、他のこねこたちがお見舞いに来るラストシーンが、僕は大好きでした。マイペースではあっても、実は、友達は欲しい。多分、僕自身のそんな気持ちが、『こねこのぴっち』への愛着につながっていたのでしょう。その『こねこのぴっち』も、あるとき、母の独断でどこかに寄贈されてしまって、しばらく、僕の手元にはありませんでしたが、今では、その後、自分で買いなおして、今では、2008年の第49刷が手元にあります。一方、『はなのすきなうし』は、手元にはありません。多分、『はなのすきなうし』にあるメッセージ色が強さが、僕にとっては、抵抗になってしまったように思います。今でも、メッセージ色の強い作品には、僕は、抵抗を感じてしまいます。もちろん、平和は大切です。しかし、絵本や芸術には、そういうメッセージを伝えるための道具であるかのように感じられてしまうものであっては欲しくないのです。もちろん、「僕には説教くさく感じられてしまった」というだけで、この絵本は、きっと名作なのでしょう。しかし、『こねこのぴっち』のほうが、僕には、純粋な楽しみを与えてくれたのは確かなことです。どちらも、岩波書店から日本語版が出ているロングセラーです。お読みになってみてははいかがでしょう。
なお、NHKドラマ『戦艦武蔵』は、9月10日(9日深夜)0:15から再放送があるようです。

〔関連ツイート〕
https://twitter.com/masahirokitamra/status/772076370004279296