5月13日の記事「高校数学『ニセ解説』に注意!」
http://masahirokitamura.dreamlog.jp/archives/52489234.html
で、「確率は同じもの同士を区別する」とか「確率では、同じものでも区別して考える」などというような、ネット上などに見られる意味不明の怪しげな記述、間違った情報、ニセ解説に対する注意を呼びかけましたが、こうした「ニセ解説」にだまされている高校生は非常に多いと見えて、またしても、Yahoo!知恵袋に投稿された数学の質問の中に、
「『確率の問題は順列と違い、区別する』などと言われますが」
という文言を見つけてしまいました。
22年7月28日に投稿されたばかりの質問
https://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q11265506526
です。
この質問の中には、受験参考書か何かと思われる一つのページの画像が添付されていますが、そこに載っている問題に対する解答は、4枚のAを区別せず、4枚のBも区別せず、4枚のCも区別せずに、4枚のAをどのどの4人が引き、4枚のBをどの4人が引き、4枚のCをどの4人が引くかということだけに着目して場合の数を数えることで確率を求めていて、4枚のAを区別などしなくても確率の計算式を作ることができるよい例となっています。
質問者の方は、
「『確率の問題は順列と違い、区別する』などと言われますが」
と書いていて、
「確率の問題は順列と違い、区別する」
という情報が疑わしいものだということに半ば気付いているようですが、それでも、なお、このニセ情報を「間違い」と自信を持って断定できずに、この質問を投稿したのだと思います。
この質問者の方のように、ニセ情報に疑いを持てる人の場合はさいわいですが、デタラメなウソ情報にだまされきっている人が多いことがうかがえるので、5月の記事に続いて、再度、同じ注意喚起の記事を掲載する次第です。

2020年6月18日にYahoo!知恵袋に投稿された
「『同じものも区別して考える』のはどうしてかわからなくなってしまいます」
という質問のページ
https://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q14227033184
にある問題も、3つのO、2つのAを区別しない数え方でも解ける問題ですが、
そのときの質問者の方が
「『同じものも区別して考える』のはどうしてかわからなくなってしまいます」
と書いているのは、いわば、当たり前で、
「『同じものも区別して考える』ことをしないといけない」
という情報のほうが間違っているのですから。
「同じものも区別して考える」ことをしないといけない問題では、何故、そういう考え方をしないといけないのか、その理由を理解することが重要であり、そのためには、

学習支援動画「高校数学プラス10題-2019-」
第1回 それって、同様に確からしい?
https://youtu.be/hLp5rqdnMnc

で解説している問題のような具体的な例について考えるのがよいでしょう。

最近、Yahoo!知恵袋に投稿された質問の中にも、やはり、そんな「区別」がポイントになる問題が見つかります。
22年7月31日に投稿された「数A反復試行の問題です」という質問
https://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q12265247577
などはそういう質問の例です。

昨日、NHKの番組「フェイク・バスターズ」で、「“出版の自由”と医療情報」というテーマについて、科学的根拠が不十分な本に翻弄された家族の話などが紹介され、根拠が不十分な内容が断定的に語られているような本が、例えばAmazonでの検索でオススメ順上位に表示されていたり、読者の高い評価コメントが多数掲載されていたりといった実態が紹介されていましたが、命にかかわる医療情報となると、本当に、問題ですね。数学に関するインチキ情報など、医療関係の嘘情報と違って、あまり、問題視されないと思いますが、やはり、間違いは間違いですので、注意を喚起する記事を掲載する次第です。どんな分野の情報でも、その真偽について、例えば、原典資料による検証が可能かどうかなど、自分で調べて考えるということをしないといけないのは当然で、それは、とても大切なことだと思います。

〔北村正裕ホームページ紹介ページ〕
https://masahirokitamura33.wixsite.com/masahirokitamura

〔HP内の教育関係情報リンクのページ〕
http://masahirokitamura.my.coocan.jp/edu-l.htm

〔HP内の教育活動情報のページ〕
http://masahirokitamura.my.coocan.jp/edu.htm


【22. 8.27追記】
またしても、Yohoo!知恵袋で「確率は同じものでも区別する」という意味不明の情報に騙されて悩んでいる人からの質問を見つけてしまいました。
「確率は同じものでも区別するのではないのですか?」という22年8月21日の質問
https://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q11266785316
です。
ニセ情報に騙されて悩んでいる高校生、かなり多いのかもしれませんね。数学でさえこんな状況なのですから、世の中に出回っているフェイク情報の多さ、大変なものでしょうね。
(22. 8.27追記)

【22.10. 4追記】
またしても、Yahoo!知恵袋に「確率はすべてを区別すると教わりました」という投稿を見つけてしまいました。
22年9月25日に投稿された質問
https://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q12268582557
です。

【22.10.11追記】Yohoo!知恵袋に「確率は見た目がおなじでも分けるとおもってました」という質問が投稿されているのを見つけてしまいました。
またまた……という感じですが、10月10日に投稿された質問
https://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q10269317275
です。「確率を求めるときは同じものでも絶対に区別する」などという意味不明の情報を発信している人には、そういう情報がこんなことにもつながってしまうのだということを、この質問の投稿を見て知って欲しいものですが、間違いを正すための情報発信を繰り返しても、一度拡散してしまったニセ情報の影響を排除するのは容易ではないということを、こういう質問投稿が教えてくれているように思います。
(22.10.11追記)

【23. 9.30追記】
Yahoo!知恵袋は、その後も、時々、覗いていますが、相変わらず、「確率問題が出てきたら何でも区別」などという間違った丸覚えをしようとして間違えている人が続出しているようです。最近では、23年9月20日の「赤玉2個と白玉3個と青玉1個が入った袋から……」という質問。
https://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q10286280050
この質問者さんは、4回中赤玉が1回自玉が1回青玉が2回出る場合、色の順番が何通りあるかを考えるために赤玉1個、自玉1個、青玉2個を並べる並べ方が何通りかを数えるところで、その2個の青玉を区別しなければならないと思ったようです。ここまで来るとあ然としてしまいますが、これが「確率問題では何でも区別」などというニセ情報が生んでいる現実です。
(23. 9.30追記)


【2023年10月26日追記】
ちょうど今年の東大理系前期日程の入試問題数学第2問が、同じ色の玉を区別しない数え方による確率計算ができる例になっていて、現在、駿台予備学校のウェブサイトに掲載されている解答例
https://www2.sundai.ac.jp/sokuhou/2023/tky1_suu2_1.pdf
が、そういう方法、つまり、同じ色の玉を区別しない数え方で確率を計算する方法になっています。
問題は、
「黒玉3個、赤玉4個、白玉5個がはいっている袋から玉を1個ずつ取り出し、取り出された玉を順に横一列に12個すべてを並べる。ただし、袋から個々の玉が取り出される確率は等しいものとする。
(1) どの赤玉も隣り合わない確率pを求めよ。
(2) どの赤玉も隣り合わないとき、どの黒玉も隣り合わない条件付き確率qを求めよ」
というものです。
問題に「袋から個々の玉が取り出される確率は等しいものとする」とあるので、12個の玉をすべて区別して並べ方を12!通りと数える方法がいわば基本的な解法ということになるでしょうが、特定の色の配列が起こる確率を考えると、どの配列の確率も3!・4!・5!/12!となり、同じ色の玉を区別せずに並べ方を「12!/(3!・4!・5!)通り」(12C3・9C4通りとしても同じ)と数えても、この「12!/(3!・4!・5!)通り」が同様に確からしいと言えることがすぐにわかるので、ここから、このような数え方での確率計算をすることができます。
現在、駿台予備学校のウェブサイトに掲載されている解答例では、
(1)で、
同じ色の玉どうしを区別せず、色の配列のみに着目しての12個の玉の並べ方が
12C3・9C4通り(12!/(3!・4!・5!)としても同じ)
であり、これらが同様に確からしいと言え、
このうち、どの赤玉も隣り合わない並べ方が
8C3・9C4通り
であることから、求める確率pを
p=(8C3・9C4)/(12C3・9C4)
と計算しています。
このように、この問題では、同じ色の玉を区別しない数え方でも、問題なく確率の計算ができるわけで、上記の解答は正しい解答ですが、確率問題では何でも区別しなければいけないなどという意味不明なニセ情報を丸覚えしようとしている人には、このような解答は受け入れられないということになってしまうでしょう。そういう人は、「確率問題では何でも区別」などという意味不明のニセ情報の被害者と言えるかもしれません。
(2023.10.26追記)

blog220513b