12月のアニメ映画公開も迫ってきた辻村深月さんの小説『かがみの孤城』。これから購入しようという人の中には、単行本にしようか、ポプラ文庫版にしようか、それとも児童向けシリーズのキミノベル版にしようかと迷っている人もいるかもしれませんね。そこで、そういう人達の参考にしていただくために、これら3つのバージョンの違いについて簡単に記しておきます。
本文そのものの違いはわずかで、単行本出版前の2013~2014年の雑誌「asta*」連載版から単行本(17年版)への大改作に比べれば、その後の文庫本出版時の修正はわずかです。
しかし、一応、単行本からの文庫化のさいの修正点を挙げておきますと、文庫版では、単行本の16ページの9行目の「それ以降、会話が途切れた」という一文が削除され、「はい」というこころの台詞の後、すぐに、「喜多嶋先生はキレイな人で」という地の文に続いていくようになっていて、キミノベル版もポプラ文庫版と同様です(ポプラ文庫版上巻22ページ、キミノベル版上巻22ページ)。
喜多嶋先生の秘密については、いわばトップシークレットで、小説未読の方には絶対に教えてはいけないことですから、ここには書けませんが、その重大な秘密は、2013年の「asta*」連載当初は、全く想定されていなかったことであり、それどころか、後の単行本で示された喜多嶋先生の秘密とは矛盾する内容でさえありました。そして、単行本でのこのあたりの記述は、喜多嶋先生がこころの味方なのかどうかも確定していなかったころの連載版の文章がそのまま使われていた部分ですが、ポプラ文庫版では、上記の一文が削除されたことで、いわば、連載版の痕跡が見えなくなっていると言ってもよいと思います。
連載版から単行本への『かがみの孤城』の大改作については、来月、彩流社から出版予定の『「かがみの孤城」奇跡のラストの誕生』の第一章で詳しく紹介しますので、興味お感じの方には、小説をお読みになってからお読みいただければさいわいです。
キミノベル版は、ポプラ文庫版のテキストにルビをふり、村山竜大さんの絵がはいっています。そうなると、キミノベル版が一番お得というようにも思えますが、ポプラ文庫版には、キミノベル版よりも文字が大きいので、大きめの文字で読みやすいというところがポプラ文庫版の長所だと思います。

来月、12月23日には、アニメ映画が公開されるので、映画を先に見る人もいると思いますが、小説も未読で映画も未視聴という人は、小説を読み終えるか映画を見るまでは、ネタバレ情報に触れないようにご注意ください。

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〔北村正裕HP内の「かがみの孤城」関連リンクページ〕
http://masahirokitamura.my.coocan.jp/kagaminokojo-l.htm

〔北村正裕ウェブサイト紹介ページ〕
https://masahirokitamura33.wixsite.com/masahirokitamura

〔北村正裕ツイッター〕
https://twitter.com/masahirokitamra

〔『「かがみの孤城」奇跡のラストの誕生』についての彩流社の情報ページ〕
https://www.sairyusha.co.jp/book/b10025211.html



【22.12. 8追記】『かがみの孤城』文庫版に、アニメ映画仕様の新しいカバー(全面カバー帯)がついたようです。
丸善ジュンク堂のツイート
https://twitter.com/maruzeninfo/status/1594544889076883456
に情報が出ています。
(22.12. 8追記)