6月14日(土)夜、東京文化会館で牧阿佐美バレエ団の「ジゼル」の公演を観劇(牧阿佐美演出・改訂振付、青山季可主演)。
今年1月に同じ会場で観劇したウクライナ国立バレエによるV.ヤレメンコ版の「ジゼル」は驚くような演出でしたが、今回の牧阿佐美版はオーソドックスな演出の「ジゼル」でした。
オーソドックスな「ジゼル」にも、音楽・演出面で色々な種類がありますが、今回の牧阿佐美版は、以前、NHK-BSで舞台映像が放送されたマリインスキイ劇場のバージョンに近かったと思います。そして、そのマリインスキイ劇場の「ジゼル」は、オーソドックスと言っても、細かいところで、音楽、演出にそれなりに特徴があるので、それに近い牧阿佐美版の「ジゼル」の舞台の観劇を機に、少し、記しておきます。特に、演出、音楽面で、必ずしも多数派ではない部分があるので、それには、是非、触れておきたいところです。
まず、「ジゼル」の第1幕の音楽では、アダン作曲の音楽の中に、ブルグミュラー作曲の曲が挿入されて村娘のパドドゥとして使われているところがありますが、この村娘のパドドゥ6曲のうちの4曲目は、今回の公演では、多くのバレエ団で使用されている曲ではなく、マリインスキイ劇場の舞台映像で聴いたことのある曲と同じ曲のようでした。この曲を使うバージョンは少数派だと思います。この点が、他のバレエ団の「ジゼル」と一番違う点。
また、第2幕の幕切れの編曲も、マリインスキー劇場の映像と同様で、最後の数小節は原曲(ボニング指揮、モンテカルロ国立歌劇場管弦楽団による音源など)と同じでオーケストラの強い演奏で終わるバージョンでした。どちらかというと、ラストは、静かに終わるバージョンのほうが多いような印象なので、この点も少数派ということになると思います(ちなみに、静かに終わるバージョンにも複数のバージョンがあるようです)。
今回の牧阿佐美版は、その他の点でも、マリインスキイ劇場のバージョンに近いところが多く、例えば、第2幕で、アルブレヒトが彼を追って森にやって来た従者を追い払うところや、ジゼルだけでなく、ミルタにまで宙乗りシーンがあることなど、特徴的なシーンが共通する要素になっていたと思います。ただし、マリインスキイ劇場の映像では、ミルタの宙乗りのさい、左から右に、ほぼ水平に飛んでいたのに対して、今回の牧阿佐美版では、左上から右下に向けて、斜めに、下降するようにゆっくりと飛んでいて、その後に右から左に水平に飛ぶジゼルとの違いがはっきりしていました。
ミルタはともかく、ジゼルについては、その宙乗りの場面の音楽は、明らかに空中浮遊をイメージしたものでしょうし、実際、1841年のパリ・オペラ座での初演時にも宙乗りが行われたようなので、この宙乗りは、やはり見たいところ。プティパによるカリインスキイ劇場での改訂振付以降、「アラベスク」の姿勢で飛翔を表すようになったとは言え、音楽にも「明示」されている部分では、宙乗り演出は、やはり見たいところです。2020年2月のパリ・オペラ座日本公演で披露された「ジゼル」(1887年プティパ、1991年バール&ポリャコフ改訂振付)では、宙乗り演出はなく、2020年10月に披露された新国立劇場の新制作の「ジゼル」(演出=吉田都、改訂振付=アラスター・マリオット)でも同様だっただけに、マリインスキイ劇場のバージョンやそれに近い今回の牧阿佐美版が貴重なものに見えてきます。これは、決して、少数派というほどではないと思いますが、この宙乗り演出にも存続し続けてほしいと思いました。
福田一雄著『バレエの情景』(1984年、音楽之友社)には、第2幕の幕切れの音楽について、「井上博文バレエ団や牧阿佐美バレエ団がパリ版」(p.154)などと書かれていますが、それは、多分、かなり昔のことなのだと思います。
牧阿佐美バレエ団の公式サイトには、「現在の舞台は1985年新制作から改訂を重ね、タイトルロールのジゼルは歴代のバレリーナによって踊り継がれてきました」という記述がありあすが、最新の改訂がいつかや、その前はどこが違っていたのかといった細かいことはわかりません。
2020年2月のパリ・オペラ座日本公演の「ジゼル」については、2020年3月のブログ記事
「パリ・オペラ座バレエ「ジゼル」宙乗り演出排除の理由」
https://masahirokitamura.dreamlog.jp/archives/52466474.html
に記してあります。
昔は、観劇するバレエはほとんどチャイコフスキー作曲のバレエでしたが、最近、アダン作曲のバレエ「ジゼル」の観劇機会が増えているような……
第2幕でビオラが活躍する「誘惑の舞」など、「ジゼル」の音楽もチャイコフスキーの音楽に劣らず魅力的だと感じます。今回の湯川紘恵指揮、東京オーケストラMIRAIの演奏も良かったし、主役「ジゼル」役の青山季可さんはじめ、牧阿佐美バレエ団のダンサーたちの演技も良かったと思います。
牧阿佐美バレエ団公式サイトの中の「ジゼル」2025年公演の情報ページ
https://www.ambt.jp/pf-giselle2025/

〔北村正裕HPの中のバレエ・オペラコーナー〕
http://masahirokitamura.my.coocan.jp/swanlake.htm
〔北村正裕ホームページ紹介サイト〕
https://masahirokitamura33.wixsite.com/masahirokitamura
〔北村正裕X〕
https://x.com/masahirokitamra
【2025年8月21日追記】
北村正裕ホームページ(音楽情報用と執筆情報用)の統合にともない、
バレエ・オペラコーナーのURLが変更になりました。
新しいURLは
http://masahirokitamura.art.coocan.jp/swanlake.htm
です。
(25. 8.21追記)
今年1月に同じ会場で観劇したウクライナ国立バレエによるV.ヤレメンコ版の「ジゼル」は驚くような演出でしたが、今回の牧阿佐美版はオーソドックスな演出の「ジゼル」でした。
オーソドックスな「ジゼル」にも、音楽・演出面で色々な種類がありますが、今回の牧阿佐美版は、以前、NHK-BSで舞台映像が放送されたマリインスキイ劇場のバージョンに近かったと思います。そして、そのマリインスキイ劇場の「ジゼル」は、オーソドックスと言っても、細かいところで、音楽、演出にそれなりに特徴があるので、それに近い牧阿佐美版の「ジゼル」の舞台の観劇を機に、少し、記しておきます。特に、演出、音楽面で、必ずしも多数派ではない部分があるので、それには、是非、触れておきたいところです。
まず、「ジゼル」の第1幕の音楽では、アダン作曲の音楽の中に、ブルグミュラー作曲の曲が挿入されて村娘のパドドゥとして使われているところがありますが、この村娘のパドドゥ6曲のうちの4曲目は、今回の公演では、多くのバレエ団で使用されている曲ではなく、マリインスキイ劇場の舞台映像で聴いたことのある曲と同じ曲のようでした。この曲を使うバージョンは少数派だと思います。この点が、他のバレエ団の「ジゼル」と一番違う点。
また、第2幕の幕切れの編曲も、マリインスキー劇場の映像と同様で、最後の数小節は原曲(ボニング指揮、モンテカルロ国立歌劇場管弦楽団による音源など)と同じでオーケストラの強い演奏で終わるバージョンでした。どちらかというと、ラストは、静かに終わるバージョンのほうが多いような印象なので、この点も少数派ということになると思います(ちなみに、静かに終わるバージョンにも複数のバージョンがあるようです)。
今回の牧阿佐美版は、その他の点でも、マリインスキイ劇場のバージョンに近いところが多く、例えば、第2幕で、アルブレヒトが彼を追って森にやって来た従者を追い払うところや、ジゼルだけでなく、ミルタにまで宙乗りシーンがあることなど、特徴的なシーンが共通する要素になっていたと思います。ただし、マリインスキイ劇場の映像では、ミルタの宙乗りのさい、左から右に、ほぼ水平に飛んでいたのに対して、今回の牧阿佐美版では、左上から右下に向けて、斜めに、下降するようにゆっくりと飛んでいて、その後に右から左に水平に飛ぶジゼルとの違いがはっきりしていました。
ミルタはともかく、ジゼルについては、その宙乗りの場面の音楽は、明らかに空中浮遊をイメージしたものでしょうし、実際、1841年のパリ・オペラ座での初演時にも宙乗りが行われたようなので、この宙乗りは、やはり見たいところ。プティパによるカリインスキイ劇場での改訂振付以降、「アラベスク」の姿勢で飛翔を表すようになったとは言え、音楽にも「明示」されている部分では、宙乗り演出は、やはり見たいところです。2020年2月のパリ・オペラ座日本公演で披露された「ジゼル」(1887年プティパ、1991年バール&ポリャコフ改訂振付)では、宙乗り演出はなく、2020年10月に披露された新国立劇場の新制作の「ジゼル」(演出=吉田都、改訂振付=アラスター・マリオット)でも同様だっただけに、マリインスキイ劇場のバージョンやそれに近い今回の牧阿佐美版が貴重なものに見えてきます。これは、決して、少数派というほどではないと思いますが、この宙乗り演出にも存続し続けてほしいと思いました。
福田一雄著『バレエの情景』(1984年、音楽之友社)には、第2幕の幕切れの音楽について、「井上博文バレエ団や牧阿佐美バレエ団がパリ版」(p.154)などと書かれていますが、それは、多分、かなり昔のことなのだと思います。
牧阿佐美バレエ団の公式サイトには、「現在の舞台は1985年新制作から改訂を重ね、タイトルロールのジゼルは歴代のバレリーナによって踊り継がれてきました」という記述がありあすが、最新の改訂がいつかや、その前はどこが違っていたのかといった細かいことはわかりません。
2020年2月のパリ・オペラ座日本公演の「ジゼル」については、2020年3月のブログ記事
「パリ・オペラ座バレエ「ジゼル」宙乗り演出排除の理由」
https://masahirokitamura.dreamlog.jp/archives/52466474.html
に記してあります。
昔は、観劇するバレエはほとんどチャイコフスキー作曲のバレエでしたが、最近、アダン作曲のバレエ「ジゼル」の観劇機会が増えているような……
第2幕でビオラが活躍する「誘惑の舞」など、「ジゼル」の音楽もチャイコフスキーの音楽に劣らず魅力的だと感じます。今回の湯川紘恵指揮、東京オーケストラMIRAIの演奏も良かったし、主役「ジゼル」役の青山季可さんはじめ、牧阿佐美バレエ団のダンサーたちの演技も良かったと思います。
牧阿佐美バレエ団公式サイトの中の「ジゼル」2025年公演の情報ページ
https://www.ambt.jp/pf-giselle2025/

〔北村正裕HPの中のバレエ・オペラコーナー〕
http://masahirokitamura.my.coocan.jp/swanlake.htm
〔北村正裕ホームページ紹介サイト〕
https://masahirokitamura33.wixsite.com/masahirokitamura
〔北村正裕X〕
https://x.com/masahirokitamra
【2025年8月21日追記】
北村正裕ホームページ(音楽情報用と執筆情報用)の統合にともない、
バレエ・オペラコーナーのURLが変更になりました。
新しいURLは
http://masahirokitamura.art.coocan.jp/swanlake.htm
です。
(25. 8.21追記)













