C型肝炎ウイルス(HCV)を最短8週の服薬で駆除できるようにした新薬、マヴィレット(一般名=グレカプレビル/ピブレンタスビル)の発売情報は、2017年11月の記事
http://masahirokitamura.dreamlog.jp/archives/52425195.html
に書きましたが、C型肝炎が「治る」病気になるまでの研究の出発点になったウイルス発見者等のノーベル医学生理学賞受賞決定が報道されました。

NHKウェブ
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20201005/k10012649311000.html

サイエンスポータル
https://scienceportal.jst.go.jp/news/newsflash_review/newsflash/2020/10/20201005_01.html

サイエンスポータルの記事によると、今回の医学生理学賞の受賞者のうち、「オルター博士は既知の肝炎ウイルスとは異なるウイルスが存在することを明らかにした。ホートン博士はこのウイルスを特定。ライス博士は見つかったウイルスがC型肝炎を引き起こすことを確かめた」とのこと。

今回は、ウイルス発見者等、米国とカナダの研究者の受賞ですが、治療薬の開発にいたる過程では、C型肝炎ウイルスの培養方法を開発した脇田隆字氏等、日本の研究者の貢献も大きかったようです。

「夢ナビ」サイト内の「C型肝炎の治療法はどうやって確立されたのか?」というページ
https://yumenavi.info/lecture_sp.aspx?GNKCD=g009227&OraSeq=56&ProId=WNA002&SerKbn=Z&SearchMod=6&Page=1&KeyWord=%E8%82%9D%E8%87%93
には、
「C型肝炎ウイルスに対して効果を持つ薬を開発するには、実験に使うためのウイルスを培養して用意しなければなりませんが、このウイルスは生体外での増殖力が弱く、人工的な培養には大きな壁がありました。しかし、2000年代はじめに医学者の脇田隆字氏が開発した手法により、C型肝炎ウイルスの培養が可能になったのです。しかもその後の実験によってウイルスに対して非常に効果のある薬が発見され、副作用の強いインターフェロンを用いなくてもC型肝炎を治療できるようになりました。それはまさに、劇的な変革を医療の世界にもたらし、現在C型肝炎ウイルスによる肝硬変、肝がんを患っている人は以前より大幅に減少しています」
と書かれています。

脇田隆字さんは、今年前半に、新型コロナウイルス対策について政府に助言するための機関として設置されていた専門家会議の座長だった方ですね(現在、国立感染症研究所所長)。

厚生労働省のサイトには、脇田隆字氏等の研究「肝炎ウイルスの培養系を用いた新規肝炎治療薬の開発」の解説
https://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkyuujigyou/pdf/result3300.pdf
もあります。

上記の「夢ナビ」のページでは、田中篤氏(帝京大学教授)の学生向けの講演動画(2018年、夢ナビ)が見られるようになっていて、約26分の動画のうち8分~16分の部分にC型肝炎の解説があります。
動画では、日本での「HCVキャリアはおよそ100~130万人」、「HCV抗体陽性率は高年齢では2%を超えるが、若年層では極めて低い」、「感染に気付いていないHCVキャリアはおよそ80万人」といったこと、初期のインターフェロン療法は5~10%程度の治癒率で、「副作用ばっかり」、「惨たんたる成績」だったこと、新薬、グレカプレビル/ピブレンタスビルでの治癒率は100%であることなどが説明されています。

その、グレカプレビル/ピブレンタスビル(商品名=マヴィレット)を開発したアッヴィ社が運営するウェブサイト「C型肝炎サポートネット」の中の解説ページ
http://cgatakanen-support.net/before/index.html
には、「現在HCVに感染している方は過去の輸血や使い回しの注射などが原因と考えられます。また、今は日常的な生活の場でHCVに新たに感染することはほとんどないと考えられています」とある一方、「30歳以上の100人に1~3人がC型肝炎ウイルスに感染」とも記されています。

自覚症状のないまま進行して、肝臓がんに至る可能性が高い病気なので、昭和生まれの人で、まだ、検査を受けていない人は、早く、検査を受けることが大切だと思います。検査を受けないと、せっかくの治療薬も使えず、ノーベル賞級の発見の恩恵を受けることもできないことになり、それは、とてももったいないことですね。昭和生まれの人で、一度もC型肝炎の検査を受けたことがない人がいたら、是非、教えてあげてください。検査については、保健所や医療機関に相談することをおすすめします。注射器が使い捨てになっていなかった昭和の時代に生まれた人の場合は、誰がウイルスに感染していてもおかしくないでしょう。
今なら、自覚症状のないうちに発見できれば、昔と違って、ほとんど副作用もなく、簡単に治すことができるようになっています。

16年に電子出版した闘病記『歌う童話作家のC型肝炎闘病二十年: 副作用の精神症状での半年入院と社会復帰から新薬での治癒までの舞台裏』
https://www.amazon.co.jp/ebook/dp/B01IJTYWYI/
に、患者の立場で体験した治療法の変遷を記してあります。
この電子書籍については、16年7月のブログ記事
http://masahirokitamura.dreamlog.jp/archives/52398364.html
で紹介しています。


〔ホームページ内のC型肝炎治療薬情報のページ】
http://masahirokitamura.my.coocan.jp/c-kan-l.htm

〔北村正裕ホームページ紹介サイト〕
https://masahirokitamura33.wixsite.com/masahirokitamura


tobyo20cjs


yumenavi2018p


【2020.10.15追記】
10月15日の朝日新聞科学面に、改めて、ノーベル医学生理学賞にC型肝炎ウイルスの発見者等が選ばれたことが取り上げられていて、ウイルスの遺伝子配列のほぼ全容を解明した下遠野邦忠氏など、日本人研究者の貢献についても書かれています。記事には、「肝炎は戦後、輸血の後に確認される例が相次ぎ、世界的な問題になっていた。注射の使い回しなどが原因と考えられた」、「1960~70年代にA型とB型の肝炎ウイルスが発見された。だが、その後も輸血後に原因不明の肝炎になる患者が続いた。それが新しいウイルスによるものと突き止めたのがオルター氏。89年にはマイケル・ホートン氏がウイルスの遺伝物質を特定。チャールズ・ライス氏はこのウイルスだけで肝炎が引き起こされることを証明した」と説明され、日本人研究者の貢献も大きいとしたうえで、「こうした研究が、新薬の開発につながっていった」と、書かれています。
ところで、朝日新聞に2016年に掲載された歌手の伍代夏子さんの闘病を記した記事が、現在、製薬会社、ギリアド・サイエンシスが運営するサイト「C型肝炎のない明日に」の中のページ
https://naosou-cgatakanen.jp/experience/
に、「C型肝炎と私」というタイトルで再掲載されています。伍代さんは、C型肝炎を克服した芸能人のひとりで、まだ、治癒率が5割程度だった時代のペグインターフェロンとリバビリンの併用療法でウイルス駆除に成功されたそうで、その後、厚生労働省の「知って 肝炎プロジェクト」にも参加して啓発活動をされていて、ラジオ番組に出演するなどして、まだ検査を受けていない人への検査の呼びかけをされています。
現在掲載されている記事の終わりの方には、「情報編」があり、「C型肝炎は患者の多さから「国民病」とも呼ばれている。ウイルス感染者は100万〜150万人と推計され、感染に気づいていない人が相当いるとみられる」、「ウイルスは血液を介して感染する。主な感染経路は、高感度の検査が導入される前の輸血や、ウイルスの不活化処理が十分でなかった血液製剤、かつての医療現場であった注射器の使い回しなどとされている」、「感染は血液検査でわかる。職場などの定期的な健康診断の項目に含まれていないところもあり、厚生労働省は、少なくとも一度はウイルス検査を受けるよう呼びかけている。保健所では無料で受けられる」等の情報が載っています。
先日、10月12日に朝日新聞ウェブ版に掲載された「C型肝炎の治療は大きく進歩 ウイルス発見にノーベル賞」という記事
https://www.asahi.com/articles/ASNB94GXJNB9UBQU001.html
には、「C型肝炎は症状がないことも多いです。せっかく治る病気になったのですが、感染していることに気づかないまま、肝がんが進行してはじめて診断されることもあります。これまで一度も検査を受けたことのない方はC型肝炎の検査を受けることをお勧めします。通常の生活を送っていればC型肝炎ウイルスに感染することはありませんので、一生に一度で大丈夫です」と、書かれています。ここに書かれている「通常の生活を送っていればC型肝炎ウイルスに感染することはありません」というのは、あくまでも現在の話であり、注射器が使い捨てになっていなかった昭和の時代には、誰が感染してもおかしくない状況だったわけですから、昭和生まれの人で、まだ、検査を受けていない人は、検査を受けるべきだろうと思います。