北村正裕BLOG

童話作家&シンガーソングライター、北村正裕のブログです。 北村正裕ホームページ(北村正裕アート空間) http://masahirokitamura.art.coocan.jp/ もよろしく。 X(旧ツイッター)アカウントは「@masahirokitamra」です。

2025年06月

沼尻竜典指揮、神奈川フィル、セミステージ「ラインの黄金」観劇

6月21日(土)、みなとみらいホールで、沼尻竜典指揮、神奈川フィルハーモニー管弦楽団によるセミステージ形式の「ラインの黄金」観劇。
今年は、4月に藤原歌劇団のセミステージ形式での「ロメオとジュリエット」(グノー作曲)を観劇しているので、コンサート形式やセミステージ形式でのオペラ上演はスルーしてしまうことが多い自分としては、短期間で2つのセミステージ形式公演の観劇というのは珍しいことですが、4月の「ロメオとジュリエット」の場合は、セミステージ形式であっても、そもそも上演機会が少ないオペラであり、今回の「ラインの黄金」の場合は、「ロメオとジュリエット」ほど上演機会が少ないというわけではないものの、自分の場合、2015年10月に新国立劇場での公演(ゲッツ・フリードリヒ演出、飯守泰次郎指揮)を見て以来、しばらく観劇機会がない状態が続いていたという事情もあります。
さて、今回の公演、演奏は堅実で、充実感があるものでしたが、演技のほうは、「セミステージ形式」といっても、ほとんど「コンサート形式」のような感じで、最小限の演技にとどまり、衣装もコンサートの衣装だし、舞台装置も一切なしという簡素なもので、視覚的に面白いというものではありませんでした。アルベリッヒ役の志村文彦さんに至っては、譜面台を置いて、譜面を見ながらの歌唱になっていたので、ラインの黄金の強奪などの重要シーンでも、演技は半分という感じになってしまっていたと思います。
そんな中、通常の公演では味わえない効果が味わえたのは、ラストシーン。3人のラインの娘が「偽りと卑怯が上では支配している」と歌うシーン。これは、ラインの娘たちが、ライン河で歌っている歌声で、舞台上のヴォータンとローゲが、山頂で、はるか下からかすかに聞こえてくる声を聴くというものなので、通常の公演では、舞台裏で歌われ、あまり強くは聞こえてこない歌声ですが、今回の公演では、オーケストラ後方部分のコンサート時には客席になるスペースの左に3人が登場して歌い、ヴォータンたちよりもむしろ高い位置から、客席にも非常によく響く歌声を披露してくれました。そして、コンサート時には客席になるオーケストラ後方の中央部分に字幕表示版が設置されていたため、「ラインの黄金」のみならず、「ニーベルングの指環」4部作の世界全体を象徴しているようなこのラストの歌詞が、ラインの娘たちの美しい歌声とともに強く印象づけられるという効果をもたらしているように感じました。その3人のラインの娘たちのうち、特に、「ラインの黄金」の最初の一声を発することになるヴォークリンデ役の九嶋香奈枝さんの美声は、冒頭から今回の公演の大きな支えになっていたように感じました。

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〔北村正裕HPの中のバレエ・オペラコーナー〕
http://masahirokitamura.my.coocan.jp/swanlake.htm

〔北村正裕ホームページ紹介サイト〕
https://masahirokitamura33.wixsite.com/masahirokitamura

〔北村正裕X〕
https://x.com/masahirokitamra

【2025年8月21日追記】
北村正裕ホームページ(音楽情報用と執筆情報用)の統合にともない、
バレエ・オペラコーナーのURLが変更になりました。
新しいURLは
http://masahirokitamura.art.coocan.jp/swanlake.htm
です。
(25. 8.21追記)

牧阿佐美バレエ団「ジゼル」(演出・改訂振付=牧阿佐美、主演=青山季可)観劇

6月14日(土)夜、東京文化会館で牧阿佐美バレエ団の「ジゼル」の公演を観劇(牧阿佐美演出・改訂振付、青山季可主演)。
今年1月に同じ会場で観劇したウクライナ国立バレエによるV.ヤレメンコ版の「ジゼル」は驚くような演出でしたが、今回の牧阿佐美版はオーソドックスな演出の「ジゼル」でした。
オーソドックスな「ジゼル」にも、音楽・演出面で色々な種類がありますが、今回の牧阿佐美版は、以前、NHK-BSで舞台映像が放送されたマリインスキイ劇場のバージョンに近かったと思います。そして、そのマリインスキイ劇場の「ジゼル」は、オーソドックスと言っても、細かいところで、音楽、演出にそれなりに特徴があるので、それに近い牧阿佐美版の「ジゼル」の舞台の観劇を機に、少し、記しておきます。特に、演出、音楽面で、必ずしも多数派ではない部分があるので、それには、是非、触れておきたいところです。
まず、「ジゼル」の第1幕の音楽では、アダン作曲の音楽の中に、ブルグミュラー作曲の曲が挿入されて村娘のパドドゥとして使われているところがありますが、この村娘のパドドゥ6曲のうちの4曲目は、今回の公演では、多くのバレエ団で使用されている曲ではなく、マリインスキイ劇場の舞台映像で聴いたことのある曲と同じ曲のようでした。この曲を使うバージョンは少数派だと思います。この点が、他のバレエ団の「ジゼル」と一番違う点。
また、第2幕の幕切れの編曲も、マリインスキー劇場の映像と同様で、最後の数小節は原曲(ボニング指揮、モンテカルロ国立歌劇場管弦楽団による音源など)と同じでオーケストラの強い演奏で終わるバージョンでした。どちらかというと、ラストは、静かに終わるバージョンのほうが多いような印象なので、この点も少数派ということになると思います(ちなみに、静かに終わるバージョンにも複数のバージョンがあるようです)。
今回の牧阿佐美版は、その他の点でも、マリインスキイ劇場のバージョンに近いところが多く、例えば、第2幕で、アルブレヒトが彼を追って森にやって来た従者を追い払うところや、ジゼルだけでなく、ミルタにまで宙乗りシーンがあることなど、特徴的なシーンが共通する要素になっていたと思います。ただし、マリインスキイ劇場の映像では、ミルタの宙乗りのさい、左から右に、ほぼ水平に飛んでいたのに対して、今回の牧阿佐美版では、左上から右下に向けて、斜めに、下降するようにゆっくりと飛んでいて、その後に右から左に水平に飛ぶジゼルとの違いがはっきりしていました。
ミルタはともかく、ジゼルについては、その宙乗りの場面の音楽は、明らかに空中浮遊をイメージしたものでしょうし、実際、1841年のパリ・オペラ座での初演時にも宙乗りが行われたようなので、この宙乗りは、やはり見たいところ。プティパによるカリインスキイ劇場での改訂振付以降、「アラベスク」の姿勢で飛翔を表すようになったとは言え、音楽にも「明示」されている部分では、宙乗り演出は、やはり見たいところです。2020年2月のパリ・オペラ座日本公演で披露された「ジゼル」(1887年プティパ、1991年バール&ポリャコフ改訂振付)では、宙乗り演出はなく、2020年10月に披露された新国立劇場の新制作の「ジゼル」(演出=吉田都、改訂振付=アラスター・マリオット)でも同様だっただけに、マリインスキイ劇場のバージョンやそれに近い今回の牧阿佐美版が貴重なものに見えてきます。これは、決して、少数派というほどではないと思いますが、この宙乗り演出にも存続し続けてほしいと思いました。
福田一雄著『バレエの情景』(1984年、音楽之友社)には、第2幕の幕切れの音楽について、「井上博文バレエ団や牧阿佐美バレエ団がパリ版」(p.154)などと書かれていますが、それは、多分、かなり昔のことなのだと思います。
牧阿佐美バレエ団の公式サイトには、「現在の舞台は1985年新制作から改訂を重ね、タイトルロールのジゼルは歴代のバレリーナによって踊り継がれてきました」という記述がありあすが、最新の改訂がいつかや、その前はどこが違っていたのかといった細かいことはわかりません。

2020年2月のパリ・オペラ座日本公演の「ジゼル」については、2020年3月のブログ記事
「パリ・オペラ座バレエ「ジゼル」宙乗り演出排除の理由」
https://masahirokitamura.dreamlog.jp/archives/52466474.html
に記してあります。

昔は、観劇するバレエはほとんどチャイコフスキー作曲のバレエでしたが、最近、アダン作曲のバレエ「ジゼル」の観劇機会が増えているような……
第2幕でビオラが活躍する「誘惑の舞」など、「ジゼル」の音楽もチャイコフスキーの音楽に劣らず魅力的だと感じます。今回の湯川紘恵指揮、東京オーケストラMIRAIの演奏も良かったし、主役「ジゼル」役の青山季可さんはじめ、牧阿佐美バレエ団のダンサーたちの演技も良かったと思います。

牧阿佐美バレエ団公式サイトの中の「ジゼル」2025年公演の情報ページ
https://www.ambt.jp/pf-giselle2025/

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【2025年8月21日追記】
北村正裕ホームページ(音楽情報用と執筆情報用)の統合にともない、
バレエ・オペラコーナーのURLが変更になりました。
新しいURLは
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(25. 8.21追記)

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