序曲がスタート。舞台中央、幕の手前に1枚の絵。公演プログラムは開かずに観劇開始。ゼンタの夢の元になるオランダ人の絵かと思いきや、オランダ人らしき人物の絵ではなく、氷河が流氷か、とにかく荒涼とした海のような絵。紫色がかった照明で始まり、救済につながる音楽が現れると照明の色が変わり右上から希望のような光が差し込むなど、序曲での幕への照明が好ましい。序曲が終わりに近づくと、右手からゼンタらしき人物が登場して、絵を持って、ゆっくりと右手に。そのまま、右端に残りますが、序曲のラストは、オーソドックスな救済の音楽。これで一安心です。とんでもない演出ではなさそうです。
2025年9月14日、東京文化会館、深作健太演出による東京二期会『さまよえるオランダ人』3日目の公演です(上岡敏之指揮、読売日本交響楽団、中江万柚子(ゼンタ)、河野鉄平(オランダ人)、他、出演)。
序曲に続いて幕が上がると、背景の壁に、額縁にはいった巨大な絵?
さきほどの流氷のような絵。
舵手(濱松孝行)が美しい歌声を披露して眠ってしまうと、絵の中の照明(!?)が赤く変化。絵ではない!
やがて、絵(もはや絵ではないが)の中が動き、中からオランダ人が登場。手前のダーラントとの会話が始まります。
絵とか絵本から出てきたよう…という言葉がありますが、今回のオランダ人の登場は、まさに絵から出てきたかのようでした。
後で公演プログラムを見たところ、この絵は、カスパー・ダーヴィト・フリードリヒ作『氷海』で、今回の演出にインスピレーションを与えた絵だそうです。絵には、人物が描かれていませんが、そこからオランダ人が現れるシーンを、ゼンタは夢想し、そのゼンタの夢想の通り、オランダ人が現れたということだと思います。オランダ人がダーラントに「娘をください」と言う場面で、ずっと舞台右端で見守っていたゼンタが激しく反応したりしていて、物語がゼンタの夢想の世界そのものであるとういうことも表現されています。
最後には、ゼンタがオランダ人を追って行って、救済の音楽と共に、「氷河」が動き、中央に現れた空間に、一度は海中に消えたかのように見えたゼンタとオランダ人が現れるという結末でした。台本のイメージに近く、美しい救済の音楽のイメージに合ったラストシーンでした。
今回、この演目の舞台を生で見るのは久しぶりだったのですが、音源を聴くのとは大違いで、よく響くオーケストラの音にはかなりの迫力を感じます。上岡敏之指揮、読売日本交響楽団の演奏が良かったのだと思います。今回、糸車のシーンで、驚くほどテンポが遅くなって、少々、戸惑いましたが、緊迫した船のシーンと対照的な室内の場面ということを考慮しているのかもしれません。
歌手陣では、オランダ人役、河野鉄平が、重厚かつ苦悩の色も出ていて好演だったと思います。ゼンタ役、中江万柚子の強い声は、ものすごい迫力で、狂信的とも言えるゼンタが表現されていましたが、高音が鋭すぎるように感じるところもあり、怖いくらいでした。
この演目の場合、主役級は、シビアな演技、表現が要求され、なかなか優雅に美声を披露するというわけにはいかないのかもしれません。今回は、脇役、舵手役の濱松孝行の歌声に、一番の「美声」を感じました。


〔北村正裕X〕
https://x.com/masahirokitamra
〔北村正裕ホームページ〕
http://masahirokitamura.art.coocan.jp/
〔北村正裕HP&SNS紹介サイト〕
https://masahirokitamura33.wixsite.com/masahirokitamura
2025年9月14日、東京文化会館、深作健太演出による東京二期会『さまよえるオランダ人』3日目の公演です(上岡敏之指揮、読売日本交響楽団、中江万柚子(ゼンタ)、河野鉄平(オランダ人)、他、出演)。
序曲に続いて幕が上がると、背景の壁に、額縁にはいった巨大な絵?
さきほどの流氷のような絵。
舵手(濱松孝行)が美しい歌声を披露して眠ってしまうと、絵の中の照明(!?)が赤く変化。絵ではない!
やがて、絵(もはや絵ではないが)の中が動き、中からオランダ人が登場。手前のダーラントとの会話が始まります。
絵とか絵本から出てきたよう…という言葉がありますが、今回のオランダ人の登場は、まさに絵から出てきたかのようでした。
後で公演プログラムを見たところ、この絵は、カスパー・ダーヴィト・フリードリヒ作『氷海』で、今回の演出にインスピレーションを与えた絵だそうです。絵には、人物が描かれていませんが、そこからオランダ人が現れるシーンを、ゼンタは夢想し、そのゼンタの夢想の通り、オランダ人が現れたということだと思います。オランダ人がダーラントに「娘をください」と言う場面で、ずっと舞台右端で見守っていたゼンタが激しく反応したりしていて、物語がゼンタの夢想の世界そのものであるとういうことも表現されています。
最後には、ゼンタがオランダ人を追って行って、救済の音楽と共に、「氷河」が動き、中央に現れた空間に、一度は海中に消えたかのように見えたゼンタとオランダ人が現れるという結末でした。台本のイメージに近く、美しい救済の音楽のイメージに合ったラストシーンでした。
今回、この演目の舞台を生で見るのは久しぶりだったのですが、音源を聴くのとは大違いで、よく響くオーケストラの音にはかなりの迫力を感じます。上岡敏之指揮、読売日本交響楽団の演奏が良かったのだと思います。今回、糸車のシーンで、驚くほどテンポが遅くなって、少々、戸惑いましたが、緊迫した船のシーンと対照的な室内の場面ということを考慮しているのかもしれません。
歌手陣では、オランダ人役、河野鉄平が、重厚かつ苦悩の色も出ていて好演だったと思います。ゼンタ役、中江万柚子の強い声は、ものすごい迫力で、狂信的とも言えるゼンタが表現されていましたが、高音が鋭すぎるように感じるところもあり、怖いくらいでした。
この演目の場合、主役級は、シビアな演技、表現が要求され、なかなか優雅に美声を披露するというわけにはいかないのかもしれません。今回は、脇役、舵手役の濱松孝行の歌声に、一番の「美声」を感じました。


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